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2009.10.25
[インタビュー]
アジアの風部門「最優秀アジア映画賞」受賞 『旅人』:ウニー・ルコント監督インタビュー
初監督作ながら見事、今年の「最優秀アジア映画賞」を受賞した『旅人』
1975年を舞台に、孤児院に預けられたひとりの少女の心の軌跡を描いた本作は、ウニー・ルコント監督の自伝的要素を反映させたという。

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ウニー・ルコント監督


――タイトルの『旅人』は、英語ですと「A Brand New Life=新しい人生」と題されていますが、原題(韓国語)の「Ye Haeng Ja」はどういう意味になっていますか?

原題については、最初は英語と同じでした。しかし韓国人にとってはしっくりこないということで、この「旅人」というタイトルをイ・チャンドン監督が考えてくれました。確かに、最後のシーンでは英語のタイトルが正しいのですが、全体の内容としては旅人という、何処からか来てどこへ向かうのかという、こちらの方があっていると思いました。


――主人公ジニを演じたキム・セロンが素晴らしい。彼女をどのように見つけたのでしょうか?

彼女はエージェントから紹介を受けたのですが、実は映画で演技をした経験がなかったのです。今回、キャスティングは5ヶ月という長期に渡って探していました。そして、彼女が見つかったのは撮影が開始される2週間前だったのです。なかなか主人公が見つからないと心配していたのですが、最後の最後になって決まりました。彼女に即興でオーデションをしてもらったら、感情を演技に出すのがうまくて感心しました。


――孤児院の他の少女たちもいいですね。

他の少女たちについても、キャスティングが固まったのは遅かったのです。ソウルの郊外をロケ場所として選んでいますが、結局、その地元の小学校から選びました。ソウルでも子役を紹介してもらったのですが、風貌もモダンな感じで、とても70年代の子供には見えない。しかも態度も現代っ子過ぎて、違うなという感じでした。そこでクルーが、ロケ地の近くの小学校に行ってビデオを撮ってきてくれたのですが、いい意味での古さと純真無垢な感じが映画に合っていました。
映画はキャスティングによって半分くらい決まってしまうと思うのですが、今回はこのようないい結果になって幸いでした。


――この役柄をキム・セロンにどう説明したのでしょう。

彼女はこの役柄を深く理解していたと思います。しかし、映画のストーリーについて細かく説明したわけではありません。どの子供も親の愛を失ってしまったらどうしようという感情があります。そのあたりのベース的なことだけを分かりやすく話しました。


――監督は、女優経験や衣装デザイナーなど、映画に多く関わっていらっしゃいますが、映画界に入るきっかけは?

子供時代はフランスの地方にいまして、その後、パリへ来てファッション・スタイリストになるための学校に入りました。そんな時、ある短編映画でアジア人役の求人広告を見ました。それはアマチュア映画だったのですが、応募してその役柄を得ることになったのです。それがスタートですので、たまたまこの世界に入ったという感じです(笑)。


――デビュー作とは思えない力量を発揮されています。

女優としての体験や、衣装デザインなどで他の監督から学んだことも多いと思います。でもひとつ分かるのは、監督としてスタートしたのが遅かったということではないでしょうか。今年43歳になるのですが、若い監督と比べて遅い年齢でデビューしたというのが関わっているのかもしれません。


――影響を受けた監督はいますか?

世代的に偏ってしまうかもしれませんが、モーリス・ピアラ、ジャック・ドワイヨンなどが好きです。彼らは子役を使って素晴らしい作品を撮っていると思います。


――「ジニのその後」的な続編を撮る予定はありますか?

確かにそういう映画も出来なくないとは思いますが、そういった映画を作るとしたら、個人的ではなくユニバーサルな心情に焦点を当てる方がいいかもしれません。
すでに、次のシナリオは書き始めているのですが、ものすごく長いので、何時どのように日の目が当たるかどうか分かりませんね(笑)。


聞き手 小出幸子

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