2009.10.24[イベントレポート]
インスピレーションは日本映画からも コンペティション部門『NYスタテンアイランド物語』:10/23(金)記者会見
10/23(金):公式記者会見の模様
公式記者会見では、記者の方からのご質問にお答えいただきました。
Q:
「日本の映画を多くご覧になっていると伺いましたが、最近では何かご覧になりましたか?」
ジェームズ・デモナコ監督
「3、4年前ですが、市川 準監督の『トニー滝谷』を見ました。何度も見ています。『NY スタテンアイランド物語』のインスピレーションにもなっています。それから今村昌平監督の『うなぎ』も大好きで、登場人物のキャラクター設定をする上で参考にさせていただいています。それから黒澤映画もたくさん観ています」
Q:
「具体的に教えていただけますか?」
ジェームズ・デモナコ監督
「 『トニー滝谷』については、撮影のスタイルや映画のゆったりしたペースについて参考にさせてもらいました。私の映画では、ジャスパーのストーリーを伝える上で、『トニー滝谷』の独特な撮影方法を参考にしました。
ごくごく普通の人々が、奇妙な状況に巻き込まれて行くというストーリー展開は『うなぎ』を手本にしました」
Q:
「ご家族も出演されているそうですね。監督の育ったスタテンアイランドについてもおきかせください」
ジェームズ・デモナコ監督
「この作品には知り合いや家族がほとんど全員登場しているんですよ。ちなみに最初の方に出てくるギャングは全員僕の従兄です。本物のギャングかどうかは、ここでは教えることはできませんけどね!
スタテンアイランドには、3 つの特徴があります。ひとつは、ギャングが多いこと。僕の家の隣人もスタテンアイランドでは名の知れたギャングでした。二つ目に、ニューヨーク市の5 つの区の中で、スタテンアイランドだけが未だに下水道がないんです。三つ目は、ニューヨーク市の中で一番イタリアンのデリカテッセンが多いことです。それらを生かして、自伝的な要素を加えて作った作品です」
Q:
「シーモア・カッセルさん演じる老人役だけが、他の二人とは年が離れていて、監督が脚本を担当された過去の作品のメインキャラクターよりも年上です。監督の中に心境の変化があったのでしょうか?」
ジェームズ・デモナコ監督
「サリーは35歳、パルミは50歳くらい、ジャスパーは70歳と、広い年齢幅をもたせることによってスタテンアイランドの全容をより上手く描けると思ったからです。
ジャスパーを言葉が話せないという設定にした理由は、世の中から切り離された空虚な世界観を描きたかったからです。自分を社会から必要とされていないと考える人たちというのがこの映画のテーマなのですが、特にシーモアの場合は、ある意味社会から隔離されているという状況を隠喩的に表現するためにこのような設定にしました」
Q:
「制作は、リュック・ベッソンのEUROPA CORPですね。リュック・ベッソンさんからは何かアドバイスがありましたか?」
ジェームズ・デモナコ監督
「お金を出してくれたことにすごく感謝していますよ(笑)
テイクを重ねるときに、2回目は早口で喋ってもらうシーンを撮影するといいよ、とアドバイスをもらいました。編集をしていて、シーンがちょっと長いと感じた時に、そちらを使うことでとても役に立ちました」
現在は、スタテンアイランドに家を建てているというジェームズ・デモナコ監督でした。
2009.10.24[イベントレポート]
【動画レポート】これぞ国際合作の大成功例 コンペティション部門『テン・ウィンターズ』記者会見: 10/22(木)
ご登壇いただいたのは、監督・脚本のヴァレリオ・ミエーリさん、主演のミケーレ・リオンディーノさん、プロデューサーのウリアナ・コバレバさんの3人。ロシアを舞台に選んだ理由、イタリア=ロシア合作の成果、今回が初来日という皆さんの日本に対する印象について語っていただきました。
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2009.10.24[イベントレポート]
角川春樹監督の印象は「恐怖」!?特別招待作品『笑う警官』:10/23(金)記者会見
角川春樹監督が『時をかける少女』以来、12年ぶりにメガホンをとったことでも話題ですが、このたび、東京国際映画祭の特別招待に選ばれた本作の記者会見が行われ、角川春樹監督、大森南朋さん、松雪泰子さん、宮迫博之さん、そして原作者の佐々木譲さんが登場。見どころや、撮影エピソードを語ってくれました。
黒のスーツに蝶ネクタイで、今回の会見でも一際存在感をアピールしていた角川監督は、
「5年前に原作が出版され、多くの監督から映画化したい、あるいはテレビ・ドラマ化したいなどという話が舞い込んでいた原作です。24時間のタイム・リミット・サスペンスなんですが、読んでいて、“これは映画的だな”と思いました。ただ、映画にするには、かなり困難を伴うとは思いましたが、そういう意味では、この映画にぜひ挑戦してみたいと思いました」
と映画化への思いを告白。
主人公の警部補・佐伯役を演じた大森さんは、角川監督の演出を受けた感想を
「僕は、子供の頃から角川映画を観てきた世代なんで、まず憧れの人に出会えたという喜びと、実際会ってみて、人間力というか、人を惹きつける力みたいなものをすごく持っている方だと思って。ホント、その勢いにのまれて現場がどんどん進んでいっている感じでしたね」と現場の様子を明かしてくれました。
また、佐伯の捜査に協力する刑事・小島役の松雪さんは、
「とにかく今まで自分でも表現したことのない何か、新しい何かを引き出してもらった」
と撮影を振り返りました。
「具体的には」と質問されると、「本人、言いにくいと思うんですよ」と、角川監督がすかさず、助け船を。
「彼女に言ったのは、今までの引き出しにないものを見せてくれ、と。それは、俺もみたことがない、お前もみたことがない、そういう引き出しを開けてみようよってね。今までの身の丈以上のことが、今回できている。次の作品に向けても、演技の引き出しが増えたのでは」と松雪さんを絶賛。
いわれなき殺人の容疑者として追われることになる巡査部長・津久井役の宮迫さんは、国際映画祭の舞台とあって、やや緊張ぎみの様子。「海外の方がどう思われるか気になりますが…」と言いつつも、いつもの「宮迫デスっ」を披露し、会場を沸かせました。撮影中のエピソードを聞かれると、
「顔に刀を突きつけられるシーンがあるんですけど、刀を持っているのは監督で。本当に怖かったです(場内笑)。演技を超えた演技というか、すごい迫力でした」とコメント。
さらに、監督の第一印象を、と聞かれた役者さんたちは、口を揃えて「恐怖」と一言。しかしながら、大森さんは
「第一印象は“恐怖”だったけど、実際は非常に優しい、笑顔のチャーミングな方です(笑)」と語り、そして松雪さんも
「少年のような朗らかな方です」とすかさずフォロー。見ていた監督も、その二人の言葉通り、終始ニコニコと微笑んでいました!
今回、11分間のワンシーン・ワンカットにも挑んだという監督。
「その緊張感が役者の持っている力を引き出したと思っています」と、本作への自信を覗かせました。実際現場では、スタッフ、キャスト陣に「スタイリッシュに、そして世界に通用する映画として撮る。だから今までの日本映画とは違うタイプの映画になるよ」と並々ならぬ意気込みを伝えてから、撮影に入ったとのこと。
完成した映画を観た原作者の佐々木譲さんも「もう、原作者としては“悔しい!”と思いましたね(笑)。あの原作をここまで深い内容にされてしまたというか。そしてラスト近くに、原作者も泣けるシーンがあったりして。原作者が泣いてどうするんだってね(笑)」
と映画化作品に太鼓判。
角川春樹監督が、満を持して放つ大人のスタイリッシュ・サスペンス『笑う警官』は11月14日(土)公開です!
2009.10.24[イベントレポート]
テリー伊藤さんも死刑囚役で出演 日本映画・ある視点『真幸くあらば』:10/23(金)
御徒町監督以下、主演の尾野真千子さんと久保田将至さん、そして奥山和由プロデューサーはこの日、記者会見を皮切りに、上映前の舞台挨拶~上映後のQ&Aと、ノンストップでフル稼働。「40年近く映画製作をしていて初めて、クランクインしてからも製作費が足りていなかった」「(1月の)公開に向けて大きく広告が出ていくことはありません。皆さんの口コミが頼り」と奥山プロデューサーが語るほどの難産の末に完成した、同作のアピールに奔走しました。
舞台挨拶から合流したミッキー・カーティスさんに
「歪んでるよ、この映画(笑)」と称された同作は、遊ぶ金欲しさに強盗殺人を犯した若き死刑囚・淳と被害者の婚約者だった美女・薫が惹かれ合い、やがて美しくもフェティッシュな形で想いを遂げる姿を通して、“生きる”ことの価値を描き出す作品。
薫を演じた尾野さんは、「(死刑囚と面会者)髪の毛一本でさえ触れることができない、手を取って愛し合えないという状況の中で表現することに一番力が入りました。(クライマックスの淳と薫が結ばれる)満月のシーンも、気持ちが高まった最後じゃなければ撮れなかったと思います」と撮影を振り返り、
淳役の久保田さんは「僕は今回が初めての主演。これがダメなら引退するつもりで、全身全霊でやりました」と、作品に懸けた覚悟を明かしました。
北野武監督作や今村昌平監督作『うなぎ』など、数々の話題作で手腕を振るってきた奥山プロデューサーは、そんな尾野さんを「彼女の演技のすごさを目の当たりにできたのは幸せでした。生の感情をそのまま引き出せるというか、今どき珍しい女優魂を持った女優」と大絶賛。御徒町監督も「触れ合うことがないラブシーンが、撮影の一番の難所。女性の身体の美しさも視点ひとつでいやらしいものになってしまう……ひとつの賭けじゃないですか。でも尾野さんが薫自身になってくれたので、あとはもう彼女に失礼のないようにと意識して撮影しました」と尾野さんの実力に太鼓判を押しました。
記者会見では、人気漫画家・江川達也さんをゲストに迎え、同作の“エピソード0”となるデジタル・コミックが執筆されていることが発表されたほか、Q&Aでは、死刑囚役として出演しているテリー伊藤さんも登場。
「撮影中の待ち時間に、独居房に1時間ほど独りでいるわけですよ。いつ死刑が執行されるのかわからない中で、独りで何ができるのか……考えましたね」と撮影時を振り返りました。
生と死、そしてセックスという人間の根源を描いた作品だけに、観客からは次々と熱の入った質問が。その一つ一つに真摯に答えていく、スタッフ&キャストの皆さんの姿が非常に印象的でした。
2010年1月9日(土)より、新宿バルト9ほか全国順次ロードショーです。
2009.10.24[イベントレポート]
【動画レポート】『ACACIA』舞台挨拶、公開記者会見:10/22(木)
舞台挨拶では、残念ながら、この日舞台挨拶に出席できなかったアントニオ猪木さんからのメッセージが代読され、辻仁成監督は猪木さんにエールを送りました。
また、記者会見では、小説ではなくて、あえて映画という表現手法を選んだ理由について、辻監督に率直に語っていただきました。
■舞台挨拶
■公開記者会見
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2009.10.23[イベントレポート]
【動画レポート】マエストロ・トルナトーレ登場!『バーリア』Q&A:10/18(日)
2009.10.23[イベントレポート]
ツァイ・ミンリャン監督を俳優に育成! アジアの風部門『台北24時』:10/22(木)Q&A
『迷子』で監督デビューを飾っているリー監督ですが、もともとはツァイ・ミンリャン(蔡明亮)監督作品の俳優と知られ、その端正な顔立ちと柔らかな表情がとても魅力的です。そのせいか観客席はほとんど女性でした!
今回、若手8人という実験的な試みに挑んだ本作。でき上がった作品については、「それぞれのエピソードが、台湾のいろいろな表情を切り取っていて大変個性的でした。若い監督たちの創作作品が、ツァイ・ミンリャン監督やホウ・シャオシェン(侯孝賢)監督とはまた違った作風になってきていることがご覧いただけると思います」とコメント。
リー監督がメガホンを取ったエピソードの注目すべき点は、何と言っても俳優・ツァイ・ミンリャンの演技。
「ツァイ監督は、長いこと監督として活躍されていますが、俳優としての仕事は相当イヤだったようで、私を恐れて逃げ回っていました(笑)。私は説得に説得を重ね、 ツァイ監督は“ロー・マンフェイさんのためなら”と出演を承諾してくれました。撮影では、ツァイ監督が泣くシーンが一番大変でした。彼が泣くまで2、3時間はかかりましたね。でも、満足がいかないときは、“もう1回やってくれ”と言っていました。私はいい俳優を育成できたと思っています(笑)」
ロー・マンフェイさんというのは、ツァイ・ミンリャン監督作品であり、リー監督も俳優として出演していたミュージカル映画『Hole』で、振付けを担当されていたダンサー。
「『Hole』をきっかけに私たちは良き友人になったんですが、残念ならが、ローさんはがんに侵されて亡くなりました。生前、彼女は自分のドキュメンタリーを撮りたいと言っていましたが、その願いは叶えられませんでした。今回、私はこの映画で、彼女の“レクイエム”という、1つの場所で10分間回り続ける作品を取り上げました。エンドロールでクルクル回って踊っていたのは、ローさんご本人です」
また、この映画をきっかけにツァイ監督とリー監督、そして作品に出演している女優ルー・イーチンさんと3人で喫茶店を台北にオープンしたとのこと。
「ツァイ監督が、昔脚本を書かれるときによく使っていたお店なんですが、当時そのお店を経営されていたのは、映画の中でお店のママとして登場する女性なんです。彼女が、コーヒー店を閉めるということを聞いたツァイ監督は、そこのコーヒーの味が大好きだったということで、お店を3人で買い取り、新しくオープンしたんです」
すかさず司会の石坂健治プログラミング・ディレクターが「リー監督は、日頃そのお店には立たれているんですか?」と質問。すると、監督からは、あっけなく「ハイ」と即答!
「もともと私もコーヒーは好きでしたが、お店をオープンしたことで、だいぶコーヒーに詳しくなりました。映画の中でもそうでしたが、コーヒーの淹れ方は日本の淹れ方です。来日中も、日本のコーヒー店に入って、その様子を注意深くルッキングしているんですよ」
リー監督のファンが殺到しそうなそのお店。お店の名前は、それぞれの名前から1文字づつとって、「蔡李陸珈琲店」というお店だそうです。(詳しくはリー・カンション監督のブログなどで検索してみてください)
2009.10.23[イベントレポート]
【動画レポート】『ゼロの焦点』完成披露イベント:10/22(木)
松本清張の世界の映像化のために必死に格闘した製作現場での思い出や、みなさんの秘密について語っていただきました。
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2009.10.23[イベントレポート]
【動画レポート】まさに「夢のような」インドでの野外上映体験 コンペティション部門『ロード、ムービー』記者会見
監督のデーウ・ベネガルさんと、共同プロデューサーのフレッド・ベルガーさんが、作品製作のきっかけとなった「インドでの驚異の野外上映」体験をはじめとする、興味深いお話を聞かせてくださいました。
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2009.10.23[イベントレポート]
【動画レポート】『僕の初恋をキミに捧ぐ』舞台挨拶:10/21(水)
新城毅彦監督、井上真央さんが丁寧に作品への想いを語るのに対して、岡田将生くんは次第に天然ぶりを発揮し・・・。
動画でお楽しみください。
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2009.10.23[イベントレポート]
答えは見た人の頭の中に。日本映画・ある視点部門『OUR BRIEF ETERNITY』:10/22日(木)Q&A
監督業以外にも、俳優としても活躍されている福島拓哉監督。本作でも、ウイルスの第1発見者“キツネ”という役で出演されています。「登場人物の名前で、キツネというネーミングは意図されたものなのでしょうか?」という質問には、
「ネーミングには意味があります。日本でも海外でもそうだと思いますが、童話に出てくるキツネって、大体キャラが似ていますよね。狡猾でずる賢く、孤独。そんなふうに既に皆さんの中にあるベーシカルなイメージを今回起用しました」と、自らが演じた役柄について語りました。
一方、高等遊民という遊び人の主人公テルに扮した草野さん。その役作りについては、
「僕はテルであろうとしただけで、演じるという意識はありませんでした。撮影スケジュールも過密だったことから、ずっとテルの服装でいられたし、テルは僕や監督だけが作り出したわけではなく、この作品のクルーみんなが作ってくれたもの。リアルに感じてもらえたらうれしいですね」とコメント。
客席から「普段の福島監督は、現場ではどんな方ですか?」と質問されると、すぐに草野さんは「そのまんまです(笑)」と一言。「監督でもあり、共演者でもあったので、監督と僕との関係、キツネさんとテルの関係がリンクしていったんです。映画の中のキツネさんとテルのやり取りの中にも出てきますが、“本当はどんなふうに思ってるんだろう”と、お互いに腹を探り合うような関係だったと思います」と2人の微妙な関係を話してくれました。
その後、「キツネは記憶を失くしたんでしょうか?」、「ミオの元彼は感染しましたか?」という、物語の見えない部分の謎についての質問が続き、監督は、「劇中でテルがしている質問と同じですね。なので今僕は、そのときのキツネさんと同じ表情をしたんですけど(笑)、内緒です。もちろん説明してもいいんですけど、そこは内緒にしていたほうが、映画を面白く持って帰ってもらえると思います。映画というのは、見ていただいた皆さんのものなので、どんなふうに解釈いただいてもそれが正解です」と。ただ、「有田さんは、ウイルスに感染したのでしょうか?」という質問では、「彼は酔っ払って足を滑らせて倒れただけです。有田さんはウイルスに感染していません」とキッパリ!
「これは答えを言ってもいい理由があります。劇中でウイルスに感染するときには、“ブウォーン”という効果音を入れています。その段階で気づく人もいるかなと思いつつ(笑)」
最後に、福島監督は、「この映画祭から始まって、世界中のいろいろなところに行きたいと思っています。皆さん最初の観客になっていただきありがとうございました」とご挨拶され、草野さんとともに劇場を去りました。
2009.10.23[イベントレポート]
natural TIFF部門『クリエイション ダーウィンの幻想』:10/20(火)Q&A
ジェレミー・トーマスさんは、『戦場のメリークリスマス』、『ラストエンペラー』といった作品をプロデュース、これまでにニコラス・ローグやデヴィッド・クローネンバーグ、(監督としての)ジョニー・デップにヴィム・ヴェンダース、テリー・ギリアムといった面々と仕事をしてきた“超”大物プロデューサーの一人です。
初来日から数えること何と今回で55回目の来日ですね!
「1980年にニコラス・ローグの『ジェラシー』で来日して以来、何度も日本には訪れました。日本でもたくさんの友達が出来、たくさんのお仕事をさせていただきました。また1950、60年代の日本の巨匠の作品は、私の映画を愛する気持ちに非常に大きな影響を与えてくれています」とジェレミーさんは日本への印象を語られました。
東京国際映画祭には、1987年に開催された第2回TIFFのクロージング作品として上映された『ラストエンペラー』で参加されたことが最初ですね。
「東京国際映画祭は映画を見せる上でとても良い場所だと思っています。私も喜んで東京国際映画祭という場所に戻ってきています。でも、今、世界では映画に対する“食欲”というものが少しずつ減っていて、この映画祭という限られたものの中でだけ映画が回っているという状況があり、なかなか大勢の皆さまに伝わらないということがあると思います。
でも、世界中の映画祭を巡り巡って作品を上映して、このように観客の皆さまとインタラクティブな空間を持てるということは非常に貴重だと考えています」と、映画界の現状についても少しだけ触れていただきました。
作品に関してもおたずねしましょう。
実際の夫婦である、ポール・ベタニーとジェニファー・コネリーの起用について?
「この作品の脚本はジョン・コリーが担当しました。そのコリーが脚本を担当した『マスター・アンド・コマンダー』にもポール(・ベタニー)は出演していて、(その時のポールの役柄はダーウィンとはまったく違う役柄だったが、)コリーがポールにチャールズ・ダーウィンをやらせたら良いのではないかと言ったのです。言われてみれば実際に顔つきがダーウィンに非常によく似ている。ですので、最初からダーウィンはポールでいこうという話で進み、他の俳優は探しませんでした。
それで、奥さん役はどうしようかとずっと考えていましたが、どうもジェニファーがこの役をやりたがっているという話をポールから聞き、夫婦と契約することになりました(笑)。
また、アニー(ダーウィン夫妻の子供役)については、非常に重要な役柄でしたので、約200、300人の女の子からオーディションで探し出しました」
ジョン・アミエル監督について?
「彼はショーン・コネリーを監督した(※ジョン・アミエルさんは『エントラップメント』を監督しました。)からです(笑)。アミエル監督は元々テレビのディレクターとして活躍しており、それからハリウッドの監督になった人物でした。そして今回、『種の起源』で世界を変えたチャールズ・ダーウィンという人物を映画で描くにあたり、(ダーウィンという人物に)隠された、裏側にあるような話ではなく、よりポピュラーなエピソードが観客に伝わるようにと思って監督を探していたところ、経験豊富な彼(アミエル)が良いのではということになりました。
アミエルは監督として非常に優れているし、俳優の扱いがとても上手でした。私も沢山の映画を作ってきましたが、そういう経験は非常に大事なことだと思います」
シナリオについて?
「ダーウィンの曾曾孫(にあたるランドル・ケインズ)が書いた小説に基づいた脚本なので、物語にはより信憑性があるのではないかと思います」
『クリエイション』という、聖書でいう“天地創造”というタイトルを付けようと思った理由は?
「原作の“Annie's box”というタイトルが(この映画には)ふさわしくないのではと感じたことと、ダーウィンという人物の頭の中で起きていたこと…人類の発生や成り立ちについて考えていたということを表すには『クリエイション』というタイトルが一番良いのではないかと思いました。当時は恐竜の存在でさえ認められなかった時代でしたが、ダーウィンは子供たちに地層の様子などを見せながら説明していました。そういったこともある意味、“クリエイション”だったのではないかと思いました」
宗教色の強い国でのリアクションはどうですか?
「そういう観点で、自分からリアクションを確認したり研究したりはしていないのですが、私としては宗教と科学の要素が非常にバランスよくとれていると思っていて、どちらかに重きを置いているということはないと思います。
数週間前のトロント国際映画祭で上映した際には非常に良い反応やレビューをいただきましたし、一部のそういった宗教的な方からの反応もあったかもしれませんが、基本的には良い評価をいただきました。アメリカでは、メル・ギブソンの『パッション』と同じ配給会社がついて、2009年12月に公開が予定されています。
私たちがこの映画のプロモーションを行っている理由は、チャールズ・ダーウィンという、それまで誰も思いつかなかったことを考えついた人がいるという、その彼の考え方を映画と共にプロモーションしているからであると考えています」
ご自身について
沢山の作品をプロデュースする秘訣とは?
「非常にラッキーなことに、私は映画の世界の中に生まれてきたようなものでした。父(ラルフ・トーマス)は50作品近い作品をつくった映画監督であり、私が17歳になった時には、すでに進む道は決まっていました。最初はエディターから始まり、プロデューサーになりましたが、実はそれは偶然の過ちであり、本当は父に倣って映画監督になりたかったのです。
私のプロデューサーとしての秘訣についてですが、とにかく自分のテイストを信じ、従うことが自分のレシピです。映画の大小にかかわらずつねに情熱を失わず、自分のテイストに従うようにしています」
台本を書く段階でプロデューサーとして注文をつけたりはするのでしょうか?
「干渉し過ぎないように心がけていますが、映画としてのある程度の基準を守りたいという気持ちもあるので、全てのプロセスに関わるようにしています。スチールや演技のクオリティについても細かく気を遣ってきて、まるでハンドメイドのスーツを作っているような気分ですよ(笑) キャスティング、脚本、音楽、舞台美術、そして今回のようなプロモーション活動にも関わるようにしているのです」
一つ一つの質問に対し、非常に丁寧な回答をしてくれたジェレミー・トーマスさん。観客との貴重なQ&Aの時間もまさしくアッという間に終了となってしまいました。日本での劇場公開は未定という本作。日本公開決定時にはまたジェレミーさんにも来日していただき、貴重なお話しを聞かせていただきたいですね。
2009.10.23[イベントレポート]
【動画レポート】『ストーリーズ』公開記者会見:10/21(水)
普段は心理療法士としても活動されているコンセプシオンさん。その経験は作品にどう反映されたのでしょうか?
→作品詳細
2009.10.23[イベントレポート]
東京に来るのは運命だった!? コンペティション作品『ロード、ムービー』記者会見:10/22(木)
『ロード、ムービー』は、ヘアオイル・ビジネスを継ぐのを嫌がった息子が、巡回映画(移動映画館)に携わることで成長していくという青春映画。
デーウ・ベネガル監督は前作『スプリット・ワイド・オープン~褐色の町~』が第12回東京国際映画祭で上映されて以来、10年ぶりの来日。
本作のプロデューサーであるロス・カッツさんとは、その10年前の東京国際映画祭の上映後Q&Aで出会ったそうで、監督は「この作品で、また来日できるのは特別な気持ち」と、東京に来るのが運命付けられたかのような気持ちを明かしました。
監督はロス・カッツさんとカンヌで再会。普段からロス・カッツさんと仕事をしていたフレッド・ベルガーさんは、その時に今回の企画を聞かされたそうで、「監督から二言だけ話があった。“家業を継ぐのを嫌がった息子が、巡回映画をするという話だよ”と。これはやらなきゃと思って、ロスともアイコンタクトをとって、やると決めました。」と、脚本を見ずに参加を決めたことを明かしてくれました。
インドでは70%の人が野外上映という形で映画を見ていると言われて驚いたという監督。インドでの撮影では、警官や軍隊に止められても、「“映画を作っている”と言うと、みんな子どもになり、協力的になった」そうです。
最後に「好きなロード・ムービーは?」ときかれて、「リチャード・レスター監督の『ビートルズがやってくる ヤァ!ヤァ!ヤァ!(原題"A Hard Day's Night")』が好きです」と答えた監督なのでした。
2009.10.23[イベントレポート]
【動画レポート】『見まちがう人たち』Q&A:10/20(火)
南米大陸で、太平洋に細ながーく面したチリの地図を思い出しながら、お楽しみください。
→作品詳細
2009.10.23[イベントレポート]
【動画レポート】『エイト・タイムズ・アップ』Q&A、公開記者会見:10/21(水)
■Q&A
■公開記者会見
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2009.10.23[イベントレポート]
【動画レポート】『マニラ・スカイ』公開記者会見:10/20(火)
2009.10.23[イベントレポート]
【動画レポート】コンペティション国際審査委員記者会見:10/19(月)
2009.10.23[イベントレポート]
【動画レポート】『風が強く吹いている』舞台挨拶:10/20(火)
2009.10.23[イベントレポート]
中谷美紀「広末さんにどこまでもついてきます!」『ゼロの焦点』完成会見&舞台挨拶:10/22(木)
上映に先駆けては、六本木ヒルズアリーナにて完成会見が開催。客席のマスコミ陣と一般からの招待者、そして周囲に陣取った一般のファンに見守られて、広末さん、中谷さんほか、共演の黒田福美さん、野間口徹さん、そして犬童一心監督がステージに登場し、この日を迎えた喜びを語りました。
広末さんは「実はサスペンスやミステリーは苦手なんです。最初に(本作の)脚本を読み終わったときの疲労感がすごくて……出演するかどうか迷ったんです」と語り、「中谷さんのキャスティングが決まっていたことが、一番背中を押してくれました」と出演の経緯を明かしてくれました。
さらに、「中谷さんがいると空気が締まるんです。いい意味での緊張感。中谷さんの前に立つだけで、私の役も成立して……ずっと委ねていた気がします」と撮影を振り返ると、「身に余るお言葉。おなかいっぱいです(笑)」と中谷さんもニコニコ。「私は、(広末さんの)天才肌が羨ましい。集中力がすごくて、一瞬で切り替わる。本当に安心して一緒に芝居ができる女優さんで、どこまでもついていきます」と、中谷さんも広末さんを絶賛!
監督と脚本を担当した犬童監督は、「脚本を書いていたときに考えていたよりも、どんどん(彼女たちの演技が、内容を)上へと持っていってくれる。すごい演技で楽しかった」と撮影を振り返り、「松本清張という巨人の作品ですから、遜色のないような作品を目指した」と作品に込めた想いを語りました。
いよいよ一般の観客を前にした舞台挨拶にも同じメンバーで登場。「映画に参加するといつも自分のあら探しや反省をしてしまって、客観的に観ることが難しいんですが、今回は本当に1人のお客さんとして楽しむことができました。こんな感覚は初めてです」(広末さん)、「とても希有な、女性の心情や同じ目線で話すことのできる監督だからこそ、このような作品が生まれました」(中谷さん)、「昭和のディテールに魅了されました」(黒田)と、舞台挨拶は順調に進んだのですが……終盤、突然中谷さんにトラブルが。「さっきから体調が悪くて……」と貧血の症状を訴えると、「プロとしてあるまじきことで申し訳ありません」と頭を下げつつ、途中で控え室に下がることとなってしまいました。
突然のアクシデントに見舞われる形になりましたが、最後は広末さんが「観終わった後は本当に“いい!”と言っていただけると思います。スタッフとキャストが命をかけて、汗水垂らして作った作品です。じっくり楽しんでくださいね」と結びました。
(なお、中谷さんは、舞台袖で暫く休むと、回復されました。ご心配いただいた皆様ありがとうございました。)