2009.10.26[イベントレポート]
【動画レポート】東京 サクラ グランプリほか各賞受賞者記者会見:10/25(日)
2009.10.25[イベントレポート]
今後の映画祭へ向けて熱い提言 アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ国際審査委員長会見
「今回私が提案したのは、“審査してやろう”という検閲官のような態度ではなく、観客と同じ立場になって作品を観ようということでした。観ていると腹にグッとくるというか、感情をぶつけられるような作品。本当に自分の心に留まった、何かを考えさせられる作品……私にとってはまさに『イースタン・プレイ』がそういう作品だったのです」
記者から「なぜ賞が同作に集中したのか? 賞を分けようという議論はなかったのか?」という問いには、「決して他の作品が劣っていたということではなく、まさに『イースタン・プレイ』が際立っていたんです。5つあった賞のうち、4賞が本当に満場一致で決まりました」と回答。
「例え話ですが、対岸の陸地を目指して大西洋を出発した船が、途中まで順調に進んでいたはずなのに、最終的にはなぜか陸地にたどり着けない、ということがあります。今回は、『イースタン・プレイ』だけがきちんとたどり着けた。監督が見せたいと込めたテーマがきちんと機能して、その表現が美しさへとつながっているんです。映画のリアリティというのは、単に現実をそのまま映すだけではなくて、真実性を見せていなければダメだと考えています。
(この作品は)若者を取り巻く複雑な現実を描きながら、最後には人生の輝き、まだ希望が残っているということを指し示しています。主演のフリストフさんもきっと、天国のどこかでよかったと考えていると思います」と、東京 サクラ グランプリ選出の理由を説明しました。
そして、イニャリトゥ審査委員長は、「10日間に観た15本を振り返りながら思ったことです」と断りながら、現在の映画を取り巻く業界の状況と映画祭の意義、そして今後のTIFFについての提言を述べました。
「昨今の映画を取り巻く状況は、ますます苦しくなっていると言わざるを得ません。それは経済的な問題はもちろんですが、映画作りが極端なもの──高額を投じた巨大プロジェクトか、絶望的に予算のない小規模作品のどちらかしかないという状況になっているんです。
経済的な危機に加えて、フランチャイズ化された超大作=いわゆるヒーロー映画やバイオレンス映画によって、モラルや芸術までが危機を迎えています。そんな腐敗した中での唯一のレジスタンスが映画祭であり、唯一価値のある期間と言えるのではないでしょうか?
気の毒なのは観客です。真に価値のある映画が観られるのは、その一時的に“展示される”期間しかないのですから。映画はテレビの延長ではないんです。レーティングや興行収入を気にする作品が多すぎます。映画とはやはり、人間の感情を伝えるものであるべきです。
映画祭は、こうした問題に対する解決方法を模索していく場でもあります。単に7日や10日間だけの問題ではありません。1ヵ月や2ヵ月間、賞を獲った作品を上映することで、口コミで認知が広がるはず。TIFFにはそういう試みをリードする存在になっていって欲しい。それが映画祭の役割なのです」
『21グラム』『バベル』ほか、人間の本質に迫る作品を生み出してきただけに、イニャリトゥ審査委員長が発するメッセージは熱く硬派であり、そして真摯。会場に集まった記者、カメラマンを圧倒する余韻とともに、映画祭は終了を迎えました。
2009.10.25[イベントレポート]
東京 サクラ グランプリ受賞作品上映『イースタン・プレイ』:10/25(日)舞台挨拶
カメン・カレフ監督はまず、「アリガトウゴザイマス、コンニチワ」と日本語で挨拶。
「今回グランプリを大変うれしく思います。この素晴らしい東京という街で、権威ある審査委員の方々からこの賞をいただいたというは、私の人生の中で、もっとも記念すべき瞬間でした。我々の祖国ブルガリアから遠く離れた日本で、この映画を通して我々の抱えている現実をほんの一部でもご覧いただけることを嬉しく思います」
続いて、ステファン・ピリョフさんも「私もグランプリをいただき、本当に嬉しく、そして興奮しています、ありがとうございます」とコメント。
「審査員に評価された点は、どんなところだと思いますか?」という司会者からの質問に、今回、最優秀監督賞も受賞したカメン・カレフ監督は、
「審査委員長のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督から、“この映画は、真実を突いている”という言葉をいただきました。それはまさに私たちが目的としていたことなのです。フリスト・フリストフの生き方、そして彼の人生の考え方を、この映画で現実的に描きたいと思っていましたので、イニャリトゥ監督にそう言っていただき、本当にうれしく思います」
映画では、日本人にとっては、普段あまり親しみのない国、ブルガリアの問題を身近に感じることができます。
「この映画をきっかけに、ブルガリアに興味をもっていただき、より知ってもらえればいいと思います。ブルガリアは、ブルガリア・ヨーグルトだけではありません(笑)。ほかにも私たちの国にはいろいろあります。大相撲の琴欧州関は、我々の国を代表して、親善大使として活躍してくれています。琴欧州関も本日こちらに来たいと言ってくれたんですが、残念ながら、稽古中なので出席はできませんでしたが」
「この映画が、私のメッセージです。ご覧いただき楽しんでもらいたいです」
ステファン・ピリョフさん
「私からは、もう1度お礼を申し上げます。本当にありがとうございました」
と、何度もお辞儀をしながら、劇場をあとにしました。
『イースタン・プレイ』は、東京 サクラ グランプリ、最優秀監督賞、最優秀男優賞を受賞しました。
本年度受賞結果発表ページにてご確認ください。
2009.10.25[イベントレポート]
「トロフィーのために新しいカバンを買わないと」『イースタン・プレイ』監督 東京 サクラ グランプリ受賞者会見
受賞の喜びに包まれて会見場に到着したカレフ監督は、「(トロフィーは)重いね。『持って帰るには新しいカバンを買わないといけないな』って話していたところなんです」とトロフィーを手にニコニコ顔。続いて到着したプロデューサーのステファン・ピリョフさんとお2人で会見に臨みました。
同作は、アルコールに依存していた画家と彼の弟の関係を軸に、個人の魂の置き場所を見つめていくという人間の本質に迫ったドラマ。現実のブルガリア社会を写し取ったその内容に、ブルガリアとトルコとの軋轢や差別についての質問が飛びましたが、カレフ監督は「悲しいことに、ブルガリアにそういった差別や偏見があるのは事実です。ただ私が感じているのは、どうして偏見を持ち続けるのかといういこと。もっとオープンになって前に進もうとするべきだと思います」と回答。「そこには、偏見を助長するような政治的な意図もあるのかもしれません。でも自分の心を信じて、他人の意見に惑わされずに偏見をなくして欲しいと思います」と続けました。
カレフ監督に大きな影響を与え、『イースタン・プレイ』を製作させるきっかけを与えたのが、最優秀男優賞に輝いた主演のフリストフさん。残念にも、作品の完成直前に急逝してしまった彼の受賞について、監督は「彼の受賞はとてもショックでした」と心情を打ち明けました。なぜなら、「そもそも私は賞というものは、いま活動していることの今後の励みとして与えられるものだと思っていた」から。しかしながら、「亡くなった方の思い出を分かち合う、彼の人生を振り返るための賞なのかな……と感銘を受けています」と話しました。
「撮影が終了して、小さなノートパソコンで編集を始めましたが、途中で資金が尽きてしまった。その後スウェーデンで共同プロデューサーを見つけて映画は完成しましたが、その時が一番孤独でした」と製作の苦労を振り返ったカレフ監督。「どのようにして作品を広く世界に観てもらうかを考えたときに、カンヌ、サラエボ、東京の3つの映画祭を想定しました。(東京 サクラ グランプリに選ばれたのは)正直に真実を描いたからだと思います。フリストフが経験したことを忠実に、彼の人生に対する姿勢を描きましたが、家族や差別、そして薬物依存……それらはきっと、すべての人々が抱えている共通のものなんだと思います」と、受賞の理由を自己分析しました。
次回作は「2010年5月に、また新しい手法で、ある若い男が自己発見をしていく物語を撮ります」というカレフ監督。TIFFからまた、世界に飛躍する新しい才能が生まれました。
→作品詳細
2009.10.25[イベントレポート]
【受賞一覧】『イースタン・プレイ』が東京 サクラ グランプリなど三冠獲得!!
「コンペティション」部門
『イースタン・プレイ』(カメン・カレフ監督)
『激情』(セバスチャン・コルデロ監督)
カメン・カレフ 『イースタン・プレイ』
ジュリー・ガイエ 『エイト・タイムズ・アップ』
フリスト・フリストフ 『イースタン・プレイ』
該当作品なし
natural TIFF部門上映作品 『WOLF 狼』(ニコラ・ヴァニエ監督)
「アジアの風」部門
『旅人』(ウニー・ルコント監督)
ヤスミン・アフマド監督
『私は太陽を見た』
「日本映画・ある視点」部門
『ライブテープ』(松江哲明監督)
クロージングセレモニー動画配信
2009.10.25[イベントレポート]
受賞直後の喜びの声! 記者会見
まずは、「アジアの風」部門で最優秀アジア映画賞を受賞した『旅人』ウニー・ルコント監督(43歳)、日本映画・ある視点部門で作品賞を受賞した『ライブテープ』松江哲明監督(32歳)が登場。
――まず受賞した今のお気持ちを。
ウニー・ルコント監督
「とても幸せに思っています。長いストレスが終わったようなような気持ち。何が起こったか分からないような状態です」
松江哲明監督
「受賞した瞬間は、正直ポカーンという気持ちでした。この会見の前にスタッフに電話で“受賞したよ”と報告できて、ホッとしたというのが正直な気持ちです」
――ルコント監督は、ソウルで生まれ、9才からフランスに住んでいらっしゃいます、ご自身の実体験はどんなふうに作品に影響されましたか?
ウニー・ルコント監督
「影響はあると思います。私がフランス語なのは、母国語である韓国語はもう話せなくなってしまったからです。母国語を失ってしまったんです。ですが、養子としてむかえられたフランスの言葉も、完全には話せません。映画が私の言語、映画を通して私の言葉を伝えたいと思いました」
――松江監督は、先程授賞式で「ある憤りがこの映画のきっかけになった」と言っていましたが、それは具体的にどんなことですか?
松江哲明監督
「この映画のエンドクレジットに“父と祖母と友人に”というメッセージを入れました。昨年5月に祖母が、10月に父が、そして映画学校で一緒だった林田賢太君も亡くなってしまいました。去年の暮れ、そういうフラストレーションがたまっていました。それを形にするために、1日1日という日にちが必要でした。映画を撮影した吉祥寺という町は、父が映画を教えてくれた町です。そこで仲間たちと映画を撮るという、これからの覚悟を形にしたかったんです。
今までの10年間は、自分のセルフ・ドキュメントのネガティブな感情で作品が出来上がりましたが、この作品は1月1日に集まってくれたみんなのおかげでポジティブな作品になったと思います」
――ルコント監督に伺います。これから映画界での女性監督はどういったポジションになっていけばいいと思いますか?
ウニー・ルコント監督
「私はカンヌやトロントの映画祭に参加し、そこでもさまざまな女性監督と話をしましたが、男性監督でも女性のような目線で描いた作品を作る方もいますし、男性監督や女性監督というような区別がなくなればいいなと思います」
次に、審査員特別賞を受賞した『激情』セバスチャン・コルデロ監督(37歳)と、女優のマルチナ・ガルシアさん(27歳)、最優秀女優賞を受賞した『エイト・タイムズ・アップ』のジュリー・ガイエさん(37歳)、観客賞を受賞した『少年トロツキー』のジェイコブ・ティアニー監督(30歳)、ケヴィン・ティアニーさん(59歳)が登場。
――今のお気持ちはいかがですか?
セバスチャン・コルデロ監督
「とてもいい気分です。受賞できて、とても感謝していますし、誇りに思っています。今回、東京に10日間滞在し、とても楽しく過ごすことができましたが、これ以上の終わりはありません。ハッピー・エンディングです」
マルチナ・ガルシアさん
「私も大変うれしく誇りに思っています。今年度の審査委員の方たちは、みなさん才能にあふれた方たちばかり。そんな皆さんに選んでいただき、感謝しています。また、この映画祭の“エコロジー”というテーマは素晴らしいと思います」
ジュリー・ガイエさん「忘れもしません。この映画祭のコンペティションに選ばれたという電話があり、みんなで大喜びした日のことを、昨日のように覚えています。他の映画祭では、みな1日や2日で帰ってしまう人も多いですが、東京はフランスから遠く離れているため、みんなずっとこちらに滞在して、楽しく話をしたり、食事をしたり、ダンスをしたりできました。この映画祭から、いろいろな方との出会える機会をいただきました。感謝しています」
ジェイコブ・ティアニー監督
「東京で素晴らしいフィルムメイカーやキャストに出会えました。今回この映画祭に参加できたグループは、みな素晴らしい人々が集まっていると思います。観客賞を受賞しましたが、温かい日本の観客の方たちに感謝したいと思います」
ケヴィン・ティアニーさん
「気分としては今日よりも、(観客賞を受賞した)昨日のほうが良かった(笑)。受賞できて本当に嬉しく思っています。東京の観客の方々に感謝します」
――『激情』でのその愛の描き方には、ご自身の実体験が含まれているのでしょうか?
セバスチャン・コルデロ監督
「実は、この映画の撮影中、私は恋をしていました。その恋が、今回の映画のセリフやシーンにも影響は与えたと思います。彼女のおかげで、ラブストーリーをより深く理解できたと思います。その彼女は、今回一緒に来日してくれました。私だけでなく、どの映画監督も、自分の個人的な経験は製作する作品に反映するのではないかと思います」
――ジュリー・ガイエさんに質問です。今回の撮影中、苦労したエピソードはありますか?
ジュリー・ガイエさん
「女優が映画の中で輝けるのは、監督のおかげだと思います。今回パートナーとして映画作りに参加できました。この映画は、監督と2人で作った短編が長編になった作品です。撮影中やなことも難しかったこともほとんどありませんでしたが、唯一、木の上に登って、6mの高さから飛び降りなければならなかったときは、監督から“アクション!”と声がかかっても、4、5回は飛び降りられませんでした。結局、そのシーンはカットされてしまいましたが、全体を通して素晴らしい映画作りになりました」
――ジェイコブ・ティアニーさんに質問です。この作品は、実話でしょうか? また日本でも政権交代があったばかりですが、そういったことも今回の受賞に影響があったと思いますか?
ジェイコブ・ティアニー監督
「実話ではありません(笑)。僕は日本のことはあまりわかりませんが、あなたがそう言うならそうかもしれませんね」
――それぞれ選ばれた理由は、どんなことだと思いますか?
マルチナ・ガルシアさん
「とてもラッキーだったからだと思います。審査委員の方が、物語に共感をもっていただき、何らかのつながりを感じてくれて、この映画がいろんな国で配給されてばばおいいなと思ってくれたのかなと思います」
ジュリー・ガイエさん
「私は審査員の方々の頭の中に入れませんので、そこでどんなことが渦巻いたかは分かりませんが、この映画は、私の演じるエルサという女性を中心に進んで行く物語ですので、この賞は私や監督だけでなく、作品全体にいただいた賞だと思います」
ケヴィン・ティアニーさん
「正直検討もつきません。ただセオリーはあると思います。今回、この映画がコンペティション作品として選ばれたとき、私がどうしても行きたいと思った理由は、この作品が北米以外で理解してもらえるとしたら、日本じゃないかと思ったからです。日本の学生たちは、学校にいる間は制服を着て、放課後はとんでもない私服に着替える子がいるから、この映画に登場する若者の反抗心に共感してもらえると思いました」
――ジェイコブ監督はどんな息子さんでしたか?
ケヴィン・ティアニーさん
「彼は一途で、ハマッてしまうとずっとそれに夢中になってしまう。テレビや映画で、7歳のときからずっと俳優をやってきた。一時は私もちょっと危ないなと思ってしまうくらいでした。17、18歳のときにロスに移ってからは、親子関係が改善できた気がします。ホッとしました」
――ジュリー・ガイエさんはフランスから、この映画祭に参加して何か感じたことはありますか?
ジュリー・ガイエさん
「次回作は日本で撮影したいです。『エイト・タイムズ・アップ』の東京版を撮影できたら、、素晴らしいでしょうね!」
2009.10.25[イベントレポート]
第22回東京国際映画祭 クロージングセレモニー テキストレポート
10月25日(日)、TOHOシネマズ 六本木ヒルズ スクリーン7にて、第22回東京国際映画祭クロージングセレモニーが行われました。
まずは、<日本映画・ある視点>部門 作品賞の発表が、日本映画・ある視点部門審査委員の関口裕子さんから発表されました。
<日本映画・ある視点部門>
「日本映画・ある視点」部門で作品賞を受賞したのは『ライブテープ』(松江哲明監督)。
受賞した松江哲明監督がコメント。
「元日に80分テープで一本で撮りました。
年の始めに集まってくれたスタッフのおかげ。スタッフ・キャストのおかげで広がりのある作品になりました。
最初にTIFFで見つけていただいて大変うれしいです」
続いて、<アジアの風>部門 最優秀アジア映画賞を、アジアの風部門 審査委員上野昂志さんが発表されました。
<アジアの風部門>
「アジアの風」部門では、最優秀アジア映画賞を『旅人』(ウニー・ルコント監督)が受賞。
受賞したウニー・ルコント監督がコメント。
「審査員の方々、そして東京国際映画祭に感謝いたします。少し変な感じもしています。アジアの風部門で賞をいただきましたが、私は今フランス語で話しています。映画というのは、こういった変な機会を作るものかもしれません。スタッフ、キャスト、そしてプロデューサーのイ・チャンドンに感謝いたします」
<TOYOTA Earth Grand Prix>を、TOYOTA Earth Grand Prix 審査委員でもある依田 巽チェアマンから発表。
<TOYOTA Earth Grand Prix>
TOYOTA Earth Grand Prixはnatural TIFF部門にて上映された『WOLF 狼』(ニコラ・ヴァニエ監督)が受賞しました。
会場に来れなかった監督の代理として、フランス大使館・文化部次席参事官フランシス・メジエールさんがトロフィーを受け取りました。トロフィーのプレゼンターは、トヨタ自動車株式会社 常務役員 新井範彦さんです。
ニコラ・ヴァニエ監督からはビデオメッセージが寄せられました。
「大変うれしく光栄に思います。
皆さんに行動を呼びかける前に、映像で呼びかけました。
今回の受賞で、多くの国から注目されるでしょう。
ありがとうございました。」
いよいよ<コンペティション部門>の発表です。まずは、昨日(24日)の観客賞授賞式で発表済みの観客賞から。
観客賞は『少年トロツキー』(ジェイコブ・ティアニー監督)が受賞!
最優秀男優賞をフリスト・フリストフ『イースタン・プレイ』、
残念ながら、受賞したフリスト・フリストフさんは撮影直後、お亡くなりになりました。
代わりに、カメン・カレフ監督がコメント。
「今、何を言ったらいいかわかりません。本当に感動しています。ありがとう。フリストのご冥福をお祈りします」
最優秀女優賞をジュリー・ガイエ 『エイト・タイムズ・アップ』
ジュリー・ガイエさん
「ドウモアリガトウ
この賞は映画が成功する道を教えてくれるかもしれません。
ありがとうございました。」
最優秀監督賞をカメン・カレフ『イースタン・プレイ』、
受賞したカメン・カレフ監督
「もう1度ここでお礼が言えること嬉しく思います。
この賞を受賞できたことで、ブルガリアの若い監督たちも嬉しく思っていると思います。」
審査員特別賞を『激情』(セバスチャン・コルデロ監督)、
セバスチャン・コルデロ監督
「アリガトウゴザイマス。
特別な瞬間になりました。
東京で上映ができて、皆さまの反応を見れてうれしかったです。
審査員の皆さまありがとうございました。」
それぞれ受賞し、いよいよ「東京 サクラ グランプリ」の発表となりました。
見事「東京 サクラ グランプリ」に輝いたのは、『イースタン・プレイ』(カメン・カレフ監督)。3部門での受賞となった本作。 監督は喜びいっぱいの様子で、受賞の喜びを語りました。
カメン・カレフ監督
「何回もここに登壇して、帰りの飛行機の荷物のチャージ料が高くならないかと心配です(笑)。
ブルガリアにとってとても誇りです。
審査員の方々、私たちの映画を選んでいただき本当にありがとうございます。
そして、東京国際映画祭に感謝します。みなさん、大好きです!」
アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ審査委員長より総評
「依田チェアマン、今回お呼びいただきありがとうございました。この東京国際映画祭で、9年前に賞をいただいてから、人生が変わりました。その賞をくれた日本に帰ってくることができて大変うれしいです。
素晴らしい人々と10日間という短い間でしたが、仕事を一緒にすることができて、とてもうれしかったです。
世界中の様々な地域から作品が集まり、さらにそれがどれも素晴らしい作品ばかりで、審査するのがとても難しかったのですが、満場一致で受賞作品を選ぶことができました。
グランプリとなった『イースタン・プレイ』に印象的なセリフがあります。主演のクリストフがクリニックにいるシーンで、「立ち上がるエネルギーはあるけど、つかまるものが何もないんだ」というシーンですが、これが現在の映画界を表しているようなセリフでとても印象に残りました。
映画祭というのは世界中の様々な努力で作られたたくさんの作品を見ることができる場所です。
現在は興行収入などを重視する流れにありますが、映画祭では社会的な背景を持った作品を多く見ることができました。
今回上映された作品のすべてとはいわなくても、多くの作品に配給会社がついて、日本の皆さんがその作品を見ることができるようになればいいと思います。
今回はありがとうございました」
最後に依田チェアマンが、
「今年もこの東京国際映画祭が盛大なうちに閉幕できることに感謝を申し上げます。昨年からチェアマンを務めておりますが、映画祭を通して、環境、エコロジー、美しい地球を守るというメッセージを届けたいと思い、昨年からグリーンカーペットを実施いたしました。映画祭としましては、カンヌ、ヴェネチア、ベルリンに次ぐ、話題性はもちろんですが、ハイクオリテな作品をお届けしたいと思っております。23回目を迎える来年は、“ホップ・ステップ・ジャンプ”の“ジャンプ”。きちんとした着地点をむかえられますよう、さらなるご協力をいただきたいと思います」と来年への抱負を語りました。
そして、「Action! For Earth」の言葉とともに、両手を掲げたチェアマン。テーマ曲の「ジュピター」が流れ、会場を大きな拍手が包む中、クロージングセレモニーは幕を閉じました。
2009.10.25[イベントレポート]
【動画レポート】亡き主演男優に捧ぐ 東京サクラグランプリ受賞作・コンペティション部門『イースタン・プレイ』Q&A: 10/22(木)
登壇されたのは、監督・脚本・プロデューサー・編集の4役を兼任されたカメン・カレフさんと、プロデューサー兼編集のステファン・ピリョフさんのおふたり。作品の完成を待たずにお亡くなりになった、主演のフリスト・フリストフさんに関する思い出を語っていただきました。
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2009.10.25[イベントレポート]
【動画レポート】東京 サクラ グランプリ受賞作!『イースタン・プレイ』公開記者会見:10/22(木)
見事、本年度“東京 サクラ グランプリ”に輝いた『イースタン・プレイ』の、公開記者会見を動画でお届けします。
「年間に7、8本しか製作されないブルガリア映画が、こうして東京に迎えてもらえて本当に嬉しい。私たちの暮らしを観てもらえる大きなチャンス」と、TIFFへの参加意義を語るカメン・カレフ監督、そしてプロデューサーと編集担当として、カレフ監督とタッグを組んだステファン・ピリョフさんの会見をご覧ください。
→作品詳細
2009.10.25[イベントレポート]
親友だった亡き主演男優に捧ぐ! コンペティション『イースタン・プレイ』:10/22(木)記者会見
登壇したカメン・カレフ監督(脚本、プロデューサーも兼任)は、今作が初監督作品。「年間に7、8本しか製作されないブルガリア映画が、こうして東京に迎えてもらえて本当に嬉しい。私たちの暮らしを観てもらえる大きなチャンスです」と、TIFFへの参加の意義を語りました。
新人監督という資金調達のハンデを乗り越えて完成にこじつけた同作品、プロデューサーと編集を担当したステファン・ピリョフさんは、「ヨーロッパ全体どこでも(映画製作をめぐる)状況は厳しいと思いますが、ブルガリアはまだ上向きだと感じています。我々の次回作は、すでに助成金の恩恵を受けられることが決まっていますし、若手監督にとっては良い環境なのではないでしょうか」と、ブルガリアの実情を明かしました。
物語のメインキャラクターであるアルコール依存症の画家は、監督の幼いころからの友人であり、実際にその役を演じたフリスト・フリストフさんがモデル。「彼の人生にインスパイアを受けて、この作品を作りました。創作した部分も多いですが、アパートや仕事、恋人、クリニック、そして彼が芸術家であるという設定、もちろん麻薬に依存しているということも、彼の事実に基づいています」(カレフ監督)とのことでしたが、残念ながら、映画の完成を待たずして、フリストフさんはこの世を去られています。
「ドラッグが原因で亡くなってしまったわけですが、再会した当初から彼は『僕はギリギリのところにいる』と混乱と疎外感を抱えていました。映画を撮ることで、それは変えていけるのではないかと思っていたのですが……」(カレフ監督)
最後に、「劇中の80%の場所が、ソフィアというブルガリア人にとって非常になじみ深いところです。自分たちの街が違う視点で切り取られている点が、ブルガリアではとても好評でした」と、印象的な風景についての質問に答えたカレフ監督。司会者から「相撲の琴欧洲はご存知ですか?」と話を向けられると、笑いながら「もちろん。『今日もし東京にいたら、(この場に)来たかった』と彼は話していましたよ」と答えました。
2009.10.25[イベントレポート]
【動画レポート】トロツキーのドラマティックな生涯に魅かれた コンペティション部門『少年トロツキー』記者会見: 10/23(金)
登壇されたのは、監督・脚本のジェイコブ・ティアニーさんと、監督のお父様で、教師から転職されたという変り種の(?)プロデューサー=ケヴィン・ティアニーさん。この「若干左寄りの環境で生活してきた」(ケヴィンさん談)おふたりが、トロツキーの魅力や、ジェイ・バルチェルさんを主演に起用した理由、カナダ映画の“SEX描写”事情(!?)などを語っていただきました。
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2009.10.25[イベントレポート]
【動画レポート】観客賞『少年トロツキー』授賞式!監督がはっぴを着て喜びのコメント:10/24(土)
贈呈されたはっぴを着ての喜びの挨拶となりました。
受賞結果一覧
2009.10.25[イベントレポート]
【動画レポート】これぞ脳内純愛! 日本映画・ある視点『真幸くあらば』舞台挨拶:10/23(金)
日本映画・ある視点『真幸くあらば』の舞台挨拶を動画でお届けします。
久保田将至さん演じる若き死刑囚・淳と、尾野真千子さんが扮した被害者の婚約者・薫の“決して触れ合うことができない純愛”を描いた同作品。「脳科学者の茂木健一郎さんから“脳内純愛触発映画”というお言葉をいただいた」という奥山和由プロデューサー曰く、“右脳で観る”映画です。主演の2人のフレッシュな挨拶はもちろん、死刑囚のひとりを演じたミッキー・カーチスさんの肩の力の抜けた挨拶も必見です。
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2009.10.25[イベントレポート]
【動画レポート】夫婦で築きあげた感動作 WORLD CINEMA部門『タンゴ・シンガー』Q&A: 10/23(金)
「バイオレンスとSEXは描かない」というこだわりを持たれている、監督・脚本・撮影のディエゴ・マルティーネス・ヴィニャッティさんと、主演を務められたエウヘニア・ラミレス・ミオリさんが、「男性監督が女性の内面描写にこだわる理由」、「1年半にわたるタンゴ特訓の苦労」、「いま、なぜタンゴなのか?」という観客の皆様からの質問にお答えいただきました。
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2009.10.25[イベントレポート]
【動画レポート】中国の美しい風景と少女の成長を描いたコンペティション部門『永遠の天』Q&A:10/24(土)
1990年代初頭から北京オリンピックまでの現代中国史を背景に、親を失った少女が恋と仕事の両立を目指しながら成長するさまを描く青春物語、コンペティション部門『永遠の天』のQ&Aの模様を動画でお届けします。
初長編作で監督・脚本・編集・エクゼクティブ・プロデューサーを手掛けた女性監督リー・ファンファンさん、リウ・ドンさん(女優)、フアン・ミンさん(俳優)、コウ・ゲンシンさん(共同プロデューサー)が登壇され、Q&Aの最後には監督から質問者の方へサイン入りポスターがプレゼントされました!
→作品詳細
2009.10.25[イベントレポート]
【動画レポート】主演イ・ボムスさんの登場に歓声が!アジアの風部門『キングコングを持ち上げる』:10/24(土)Q&A
主演のイ・ボムスさんの姿に会場からは歓声が!「演技をリアルに見せるため二ヶ月に渡る訓練を行った」など撮影の裏話もきけました。
→作品詳細
2009.10.25[イベントレポート]
日本映画・ある視点『掌の小説』:10/24(土)舞台挨拶・Q&A
24日には、坪川拓史監督(『日本人アンナ』)、三宅伸行監督(『有難う』)、岸本司監督(『笑わぬ男』)、高橋雄弥監督(『不死』)が、川端康成の同名短編集から4編を選んで映像化したオムニバス『掌の小説』の2度目の上映が行われました。当日はあいにくの雨模様、さらには21時前からの上映でしたが、劇場には多くの観客が。
坪川監督、三宅監督、高橋監督以下、舞台挨拶に登場した魅力的な女優陣(清宮リザさん、内田春菊さん、星ようこさん、中村麻美さん、菜葉菜さん、寉岡萌希さん)、主題歌を担当したKagrra,のお2人は、感謝の気持ちとこの日を迎えた喜びを語りました。
上映終了後の恒例のQ&Aには、坪川監督、三宅監督、高橋監督の3人が再登場。05年の『美式天然(うつくしきてんねん)』以来、今回で3回目の登場となる坪川監督は、“くものすカルテット”のアコーディオン奏者としてTIFFparkで4年連続のライブも行っているTIFFではすっかりお馴染みの人物。今回は「高校生のころから読んでいて、好きだから」と、川端康成の122編から成る短編集の映画化を企画。
三宅監督、高橋監督、岸本監督に声をかけ、それぞれの作品ではお互いが助監督を務め、美しい作品を完成させました。
坪川監督は、「海の水を天日干しにして作った塩の、ひとつひとつの美しい結晶みたいな作品」と、川端の原作を表現しました。原作への愛から映画化を決めた坪川監督に対して三宅監督は、「(有名な)原作をどう映像化するかというプレッシャーよりも、自分の物語にしてしまうことが、作品に対する誠意だと考えました」と述べ、「(企画に)後から入る形で 『不死』で最終話を撮ることが決まっていた」という高橋監督は、「他の監督の前3話の“余韻”を作る役目だと考えていましたから、各作品をバラバラにならずにまとめるのは難しいよなあ……という印象でした」と苦労を振り返りました。
また、「他に撮りたい短編は?」という質問の際 に高橋監督は、「実は『日本人アンナ』をやりたかった」と告白。坪川監督は「え!? 本当に!?」と初耳でびっくり。「坪川監督が撮っている背中を見ながら、ずっと“いいなー”と思っていました」と心情を明かしました。
4編共通のモチーフとして“桜”が、印象的に使われている同作。坪川監督は「桜が咲くころにはきっと劇場で見られると思いますので、その際にまたぜひ観に来てください。そしてその後…一緒にお花見しましょう(笑)」と結びました。
2009.10.25[イベントレポート]
満員の客席からは大歓声が! コンペティション『少年トロツキー』:10/23(金)Q&A+記者会見
客席からは「素晴らしい作品をありがとう」、「私の中のグランプリに決定しました、おめでとうございます」など、興奮と熱気にあふれた感想が続々と寄せられました。
「主人公のような野心的で、革命的な人間になる、自分が自分らしくいきるためには、どうすればいいですか?」という男性からの質問に、監督は
「これが現実的な世界だとちょっとクレイジーかもしれないし、あんなにいっぱい喋る少年では、映画の中のように“まだ喋るのかよ”と思われてしまいますよ。ただ、レオンがトロツキーを信じたように、信じるのは何でもいいのです。自分が何かを信じて、活動的になって、責任を取るという、何かに自分が携わる、関連するという意欲を持ってもらいたいということなのです。それが全てであり、それが彼の伝えたいことです」
「この作品のテーマと、今年アメリカの大統領がオバマさんに代わったことがリンクしていた気がする」という感想を聞いた監督は、
「企画が始まったのは9年前で、ちょうどブッシュ政権が発足した頃でした。実際に撮影に入った時は、オバマ氏が選挙中で、“ひょっとして、これってオバマ・ムービーかもね”と言っていたくらい。自分としては大統領がオバマ氏になって良かったです。もしマケイン氏だったら、この映画はアンチマケインになってしまったかもしれない(笑)。この映画を見て少しでも元気になってもらえればいいなと思います」と、心境を語ってくれました。
また、主人公レオンを演じたジェイ・バルチェルさんのキャスティングについて質問されると、
監督「ジェイしかいないと思いました。ただ気をつけなければいけないと思ったのは、共産党という背景があるので、この少年があまりにも両極端になってしまうと、ストーリ-やキャラクターがうまく描けなくなってしまうということ。ジェイ自身はレオンのような人物ではないのですが、自分が興味のあることには、もの凄い情熱を持ち、もの凄い早口で話す人なので、役柄にピッタリだと思いました。一度彼の家に行った時、自分が夢中になっていることについて凄い勢いで話をしてくれました。その様子を見て、“この調子で社会主義に対して同じように話してくれたら最高だな”と思ったんです」と、ジェイコブさんを起用したきっかけをおしえてくれました。
またケヴィンさんは、この作品ならではのエピソードを披露!
「カナダでこの映画を買ってくれた配給先から、“タイトルを変えてくれ”と言われたのです。当然ながらトロツキーという人の知識をもっている方は、この作品が政治的な映画ではないかと誤解する可能性があったからです。そこで、スクリーンテストをすることになりました。トロントのあるショッピングモールの映画館に30人ほど集まってもらって、アンケートをとりました。質問は、“トロツキーのことを知っていますか?”というものでした。すると、30人の女性のうち知っていたのは1名。そこで、“この映画はタイトルを変えるべきか?”と聞いてみると、“そのままでいいんじゃない? だってこのタイトル、耳障りが良いから”」と言われたのです。その日集まってくれた30人のおかげで、『The Trotsky』というタイトルがそのまま使われることになりました」
続いて開かれた公開記者会見では
「男子高校生が主人公の場合、全てを成し遂げて、そして最後に恋が成就する。この映画は、時計で測っていたのですが、開始40分で早々にベッドインしてしまう。これは監督の実体験なのでしょうか?」っという大胆な質問が飛び出しました。
監督「残念ながら実体験ではありません(笑)。例えば、『アメリカン・パイ』では、若い青年たちの頭の中はひとつだけ。寝ても覚めてもセックスのことしか考えていない。でも、この映画はそういう映画にはしなくなかった。もちろん女の子を好きになったり、男の子ですからセックスが嫌いということはないと思いますが、この映画は、ある若者が“自分は世界を変えてゆけるのだ”という強い信念のもとで成り立っています」
ケヴィンさん「カナダの映画をたくさんご覧になっている方はわかるかもしれませんが、カナダではセックスするシーンはあまりないです(笑)」
2009.10.24[イベントレポート]
10/24(土)TIFFparkにて『みなと上映会』が開催されました。
今回も大勢の皆さまにご来場いただき開催された『みなと上映会』。昨年同様、上映方法は、大型スクリーンに映し出された作品に会場にいる声優さんがその場で声をあてていくボイスオーバー方式。
会場に来なければ味わえない臨場感は今年も好評でした。
2009.10.24[イベントレポート]
草食系監督は星占いがお好き? アジアの風『ヤンヤン』:10/24(土)Q&A
まずは、日頃通訳のお仕事もされているというチョウ・ヨンチェ監督が流暢な日本語でご挨拶。
チョウ・ヨンチェ監督「皆さんこんにちは。東京国際映画祭に来るのは3度目ですけれど、本当に仕事という感じがなくて(笑)、 すごく親しみを感じていて、こんなに緊張感がなくていいのかなって、自分でも思うのですけれど。今日は見に来てくださって本当にありがとうございました」
――ヤンヤン達が陸上をやっているという設定にしたのはなぜでしょうか?
チョウ・ヨンチェ監督「実はまず最初に、ヤンヤンがずっと走っている最後のショットが頭の中に思い浮かんだんです。そこから、“このストーリーは何だろう”と脚本を書き始めました。女の子が走っている画面から、陸上という設定にしようというのはすごく自然かなと思ったのと、それと僕は、単に人が走っているジェスチャーが大好きなのです」
――ちなみに監督は体育会系だったりするのでしょうか?
チョウ・ヨンチェ監督「いえいえ…草食系です(笑)」
――顔に近づいたアップが続きますが、俳優としては難しくありませんでしたか?
ホワン・チェンウェイさん「今回はワンカットがすごく長く、ドキュメンタリーのように撮影され、ほとんどカット割りもしませんでした。時にはカメラを顔にものすごくピタッとつけられて演技をしました。そういう撮り方だと、演技しているというよりも、自分がそのひとつの環境の中で、演じている人物になっているという感じになれた。自分が今まで演じてきた作品とは全く違う撮り方だったので、大変ではありましたが、キャストとのチームワークが自然にできましたし、いい経験ができたと思います。監督からの演出はとくになかったです。僕らは安心し、カメラを信じて演技をすることができました」
――全体的に光の量を抑えながら撮っているという印象がありました。監督はかなり光の量についてこだわりがあったのでしょうか?
チョウ・ヨンチェ監督「光の量に関してはほとんどカメラマンに任せきりです。彼はしし座で、個性的にも凄く、野心的で自由奔放な考え方のある人。彼と一緒に仕事をする時は、自由に撮らせるのという方法が良いんです。それは、画面の上でということではなく、俳優の演技がよりリアルになるということです。僕が“もう少し明るくしてくれ”ってオファーを出すこともありますが、最終的にはもう信頼するしかありません。ときどき手ブレや暗すぎる、明るすぎる、クローズアップしすぎている、ということは沢山ありますが、 もしそれらを取り除くと良いところもなくなってしまう。それが、彼の美学なんです。例えで言うなら、一人の人を愛するときは、彼女の優れたところだけ愛することはできない。欠点もいいところも全て愛さないといけないんです!」と、ちょっと力が入ってしまい、監督自身少し照れくさくなったようで、「だから…そうです!」とつけ加え、会場は温かな笑い声に包まれました。
司会者から「監督は星座にお詳しいようですが(笑) ホアンさんや自分の星座について何か分析はできますか?」と聞かれると、
チョウ・ヨンチェ監督「この映画を撮り終えて気づいたんですが、ホアンの星座は僕の父と同じおうし座で、ヤンヤン役のサンドリーナも僕の母と同じ星座。僕の頭の中では、2人の組み合わせが理想的な男女像なんだと思います(笑)」
自ら草食系で星占いにも興味があるという繊細な一面を披露してくれたヨンチェ監督でした。