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2009.10.18
[更新/お知らせ]
コンペティション部門『激情』セバスチャン・コルデロ監督からのメッセージ

10/18(日)21:30 - (開場21:00)、
10/22(木)17:50 - (開場17:30)
に上映される、コンペティション部門『激情』のセバスチャン・コルデロ監督より、メッセージをいただきました!

チケット:
18日上映分の当日券は電子チケットぴあ
22日上映分の前売券は電子チケットぴあまたは、ローチケ.comへ!



メッセージ:
ある男を殺したあと、ホセ・マリアは屋敷に隠れることを選択し、愛する人のそばに留まるために目に見えない存在になる。彼がそこにいることは誰も知らず、まるで幽霊のように覗き見をしながら、その家のなかで起こっていることの目撃者となる。漏れ聞こえてくる会話、見つかる危険のあるドラマティックな瞬間、物陰からチラっと垣間見える登場人物たち。ホセ・マリアは極限の生活を送っており、まるで野生の動物のようだ。見つかることを怖れ、また自分が愛する女性、ロサについて何かを発見してしまうことを怖れている。彼女はその屋敷で働きながら、暮らしており、彼のすぐそばにいるのだが、手の届かない存在なのだ。
ホセ・マリアはひっそりと孤独な生活を送っている。スペインにいる数多くのラテン・アメリカからの移民と同じく、彼の唯一の慰めは自分が愛する者と再びつながることへの希望によってもたらされている。彼とロサが最近会ったばかりだということは関係ない。彼はもうひとつの電話回線を見つけ、再び彼女とつながる。その発見はいつの日か、再び一緒になれるという希望を増幅させる。数週間ぶりにふたりを結びつけるホセ・マリアのロサへの電話は、彼がダイヤルを回すシーンから始まって、下の居間で鳴っている電話に向かって屋敷のなかを移動するまでの連続ショットで描かれる。滑らかだが、不吉なステディカムの動きが、触れることができないのにロサと空間を共有し、彼がこの屋敷の目となり耳となっているのだということを一層強く思わせる。
美的な面で、この作品は比較的「伝統的な」映像話法から極端に図案化されたものへと変貌していく。それは孤独に疲弊していくホセ・マリアの内面の変化と崩壊を反映している。ロサとの会話がふたりの「長距離」な関係の中心になっているのだ。
ふたりが一緒の暮らしを夢見ている間、退廃的な屋敷は、かつてあった幸せの瞬間のなごりを反映しているだけだ。記憶のほとんどは、ホセ・マリアが隠れている屋根裏部屋にため込まれており、ふたりはいつの日か家族を持とうという夢に満たされている。皮肉なことに、トレスとその子供たちは家族関係と愛の崩壊を典型的に示している。自己の利益と孤独への怖れによってしか、一緒にいようという気持ちを保っていられない家族なのだ。
『激情』における「憤怒」は、尊敬、愛、家族といった基本的なことを否定されたことに対しホセ・マリアのなかで湧き上がる憤慨を暗に示している。彼は隠れること、見えない存在になることで反抗している。ホセ・マリアはこれが自分にできる唯一の選択肢だと思っているが、その状況は矛盾しており、希望がない。なぜなら彼は究極的には消え去ることを望んでいないからだ。

セバスチャン・コルデロ


セバスチャン・コルデロ監督





『激情』
激情
Telecinco Cinema S.A.U, Producciones Rabia LTDA, Think Studio S.L

監督:セバスチャン・コルデロ
出演:グスタボ・サンチェス・パラ、マルチナ・ガルシア、コンチャ・ベラスコ

[解説]
肉体労働者と住み込みのメイドの関係は、男の起こした事件で終わったかに見えた。しかし、男は女の側にいることを決意する。想像を超えた方法で…。卓越した映画技法と役者の渾身の演技が光る激情的ラブストーリー。

[あらすじ]
移民の建設作業員ホセ・マリアは、ガールフレンドのロサが家政婦をしている老夫婦の荒れ果てたアパートで数日を過ごしていた。ある日ホセは、建設現場の監督と対立し、暴力を振るったすえに殺害してしまう。老夫婦のアパートに逃げ込み、廃墟と化した広い屋根裏部屋に身を隠したホセは、まるで覗き魔か、もしくは幽霊のように、ロサの日常を観察しながらひっそりと毎日を過ごし始める。ロサに電話をするものの、身分を明かすことはできないホセ。こうして始まった“遠距離恋愛”に、ふたりは再び一緒になることを望むようになるが、驚くべき新事実により、ホセは屋根裏部屋に留まらざるを得なくなる…。

 


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